そろそろ卒業の時期ですね。今でも卒論を進めている学生が何人かいるので、その指導をしながら次年度に向けた計画を立てているところです。
さて、4月からの新年度に向けて河野ゼミの研究テーマを以下のように変更したいと考えています。
Now:ソーシャルメディアとその社会的影響に関する研究
Next:サイバーワールド~分散仮想環境におけるヒューマンコミュニケーション~
現在のテーマは、情報大に着任した2011年に決めたものですので、既に5年が経過しています。これまでソーシャルメディアに着目してきましたが、現状ではソーシャルメディア自体にあまり拘っている訳ではないこと(必要であれば当然使う方針)、もう少し技術よりの方向性を打ち出したい(社会系や心理系の研究室と勘違いされることを避ける意味もある。実際には技術と社会の中間領域あたりがフィールド)と考えていて、このようなテーマとしました。
ゼミ室の本棚(2016.3.22 現在)
実際の方向性は、これまでと大きく変わる訳ではないのですが、5年前に打ち出したテーマと少しずつズレが生じてきたのでこのタイミングで修正します。ただし、現在のゼミ生は、以前のテーマで募集してきたこともあり、2016年度は過渡期になると考えています。
これまでの研究テーマ(学生時代含む)を振り返ると、以下のようなものがありました。今後は、今までの視点は大切にしながらも、より技術的なテーマに取り組みたいと考えています。
□これまでの研究テーマ
・リアルタイム型ネットワークゲームにおける分散処理
・Ajaxを用いたリアルタイムWebゲーム開発
・Twitter上の興味・関心の可視化システム
・ソーシャルメディア活用による地域活性化
・高校生のための情報リテラシー教育
・7つの習慣に基づく自己実現支援システム
□今後予定の研究テーマ
・サイバーセキュリティのための自律分散型Webクローラ開発
・学生が主体性を発揮するための自己実現支援システム
・地域の情報を蓄積するWebメディア
上記すべてを包含するようなよい言葉はないかと考えていたところ、「サイバーワールド」というキーワードが頭に浮かびました。所属するサイバーワールド研究会から取ったものですが、「なるほど!確かにこれならしっくりくる」と感じました。ちょっとだけ響きが古い気もしますが、一周回って今でしょうとも感じますし、うまい具合に全体を包んでくれるキーワードです。
あとは、これまで研究で扱ってきた「分散仮想環境」というフィールドと、やっぱり人目線を第一に考えたいので「ヒューマンコミュニケーション」を入れました。これまでの研究はすべて、システム自体の効率化や高速化などが目的ではなく、その先にいる「人」がどう感じるかを大切にしてきたので、やはりそこは重視したいところです。
※分散仮想環境:コンピュータ内に構築した仮想空間を複数の端末で共有する技術。
ちなみに、卒論提出間際の4年生にこの話をしたところ、「2年前に聞きたかった」と言ってくれたので、ゼミでの指導方針はこの言葉に込められていたのだと再確認できました。
ゼミ室の様子
上記を踏まえ、2016年度のゼミ活動では、以下のテーマでプロジェクト研究を進めたいと考えています(参考:河野ゼミWebサイト)。
- サイバーセキュリティ対策技術研究プロジェクト
- 排他的なWebクローリングのための自律分散協調システムの研究開発
- 分散処理技術、仮想化技術を応用した研究
- 地域活性化のためのWebシステム
- 千葉市花見川区、香取市佐原を対象としたまちづくり
- 地域の情報を蓄積・発信するWebメディア
- 位置情報システム(佐原山車マップ、飲み歩きマップ)
- 地域情報Web API
- なりたい自分でつながるソーシャルメディア開発
- 7つの習慣に基づく自己実現支援システムの研究開発
- 主体的行動のための第二領域時間管理システム
- 学生の自立と協調のための価値観共有システム
上記1は、2016年度からの新規テーマで、システム開発コースの各ゼミの共同研究になっています。このテーマは、セキュリティの知識、Web解析技術、並列分散処理、仮想化技術などを応用する必要があり、技術的にチャレンジングなテーマです。
上記2は、地域活動と情報発信がテーマで、地域の方々との関係構築に加えて、課題抽出のための論理的思考力や課題解決のための技術力も求められます。
上記3は、7つの習慣やポジティブ心理学などの知識をもとに、人が主体的になるためのシステムを開発します。この研究テーマを通じて、学生の行動に変化が訪れることを期待しています。
サイバーセキュリティに関するディスカッション
このように、技術と社会の中間領域を攻めながら、「ITを使った社会的課題の解決」に取り組んでいきます。今後ともよろしくお願いいたします。