2015年3月14日土曜日

就職活動と卒業研究の相乗効果

皆さん、こんにちは。

大学3年生や大学院修士1年生は、この3月に就職活動(就活)が始まりました。これまで就活の開始時期は、学部3年の12月だったのですが、2016年卒の学生から学部3年の3月となり、3ヶ月後ろ倒しになりました。この時期から採用情報や説明会などが解禁されます。一方、採用活動(筆記試験や面接)は学部4年の8月からとなるようです(以前は学部4年の4月)。

この採用スケジュールは、経団連が加盟企業向けに示したガイドラインであり、加盟していない外資系企業やベンチャー企業などは、早期に採用活動を開始する可能性があります。

さて今回は、就活と卒業研究(卒研)に関して、大学教員の立場から学生の皆さんに向けてメッセージをお伝えします。

2015.3.9 合同企業説明会@東京情報大学




卒研の重要性

冒頭で就活の話をしましたが、ではなぜこの段階で卒研が重要となるのでしょうか?まずは就活をサクッと終わらせて、そこからじっくり卒研に取り組めばよいのではないかとか思いませんか?

よく考えてみてください。就活の面接で「大学で一番頑張ったことは何ですか?」と面接官に聞かれて、「バイトを一生懸命していました」とか「サークルで部長をやっていました」とかで、面接に受かると思いますか?

面接では、これまでの経験で培った考え方や価値観が問われます(参考:就職活動における心構えと大学での学び)。何のために大学に来ているのか、自分の強みは何か、どういうキャリアを描いているかなどは当然聞かれるでしょう。

そういった面接官との対話を通じて、自分で課題を発見し、それを解決できる能力があるのかが見極められます。その能力を訓練する場が、「大学」や「ゼミ」、「卒研」なのです(参考:大学で学ぶ意義:継続して課題を発見し解決する能力を養うこと)。

2014.4.11 ゼミでのワールドカフェの様子

就活と卒研の相乗効果

就活では何が求められるのか」、「何のために卒研を行うのか」については、上述のエントリに詳しく書いてありますので、興味がありましたらご覧ください。ここからは、就活と卒研の相乗効果を考えてみます。ざっと挙げても、以下のような効果があるでしょう。
  1. 卒研テーマを通じて、面接官に自身の問題意識を伝えることができる
  2. 企業の志望動機と研究テーマの関係を結び付けることができる
  3. 研究課題に対するアプローチにより、課題解決能力を示すことができる
  4. 研究の成果物があれば、そのまま自己PRになる
  5. 例え研究のことを聞かれなくても、きちんとやっていれば自分の自信になる
  6. 面接官のアドバイスを研究にフィードバックできる
まず、1について、どういったことに関心があるのか、どのような問題意識(ある問題に対して、主体的に関わろうとする意識)を持っているかを自分の言葉で伝えることができれば、面接官にも自分の考え方や価値観が伝わります。面接では、あなたがどういう考えを持った人間であるかが問われます。あなたが何をしたいのかも重要ではありますが、それ以上に会社にどういう貢献ができるかが問われます。面接官は、研究テーマを通じあなたの考え方や価値観を推し測ることで、あなたが会社に貢献できる人間かを見定めることができます。

次に、2について、応募する企業を選ぶ際は、少なからず大学での学びが関係しているはずです。もしそうでなければ、何のために大学に来たのかをもう一度よく考える必要があるでしょう。志望動機と研究テーマの関連性を見い出すことができれば、その企業を志望する説得力が増します。もちろん、研究テーマと仕事の内容が直接関係することは稀ですが、企業の目指すビジョンに共感できるかが大切です。そのためには、卒研にしっかりと取り組んでおき、自分の研究に対する理解を深めておくことが先決です。

3について、仕事とは課題解決の連続です。卒研では、自分で課題を発見し、それを解決しなければなりません。つまり、大学生活の中で課題解決能力を養う場としては、卒研は最適といえます。研究でどのような課題解決のアプローチを取ったのかを説明できれば、自身の課題解決能力を示すことができます。さらにいえば、大学ではいくら失敗してもよいのです。例え卒研で最終的によい結果が得られなかったとしても、それをきちんと分析できればよいのです。

4について、研究で開発したシステムや地域での活動実績など、研究での成果があれば、就活時の自己PRに大いに活用できます。こういった成果は、Web上で確認できるよう準備しておくとともに、そのURLを履歴書やソーシャルアカウントのプロフィールにも記載しておきましょう。東京情報大学では、3年次からゼミ配属であるため、こういった研究成果をアピールできるチャンスがあります。

5について、意外とこれが一番重要かも知れません。自分のやるべきことにしっかりと取り組んでいれば、自分の自信になります。学生というのは、学ぶために生きている訳ですから、勉強や研究が本分です。自分の本分を大事にしている人からは、表情や受け答えからその人の自信を感じ取ることができます。私の場合、学部4年での就活はよい結果とはなりませんでしたが、修士では何度か学会発表を経験して、自分の研究に自信を持っていたこともあり、就活をうまく進めることができました。これは2年間での経験なので同じように比べることはできませんが、研究にしっかりと取り組んでいれば、自分の自信になることは間違いありません。

最後の6は、就活から研究に対するフィードバックです。面接時に研究テーマについて話すことで、面接官から様々な指摘やアドバイスを受けることができます。普段のゼミとは違って、社会人の視点から意見が得られるため、それを研究に活かすことができるかも知れません。社会人で研究に興味を持ってくれる方がいれば、研究室との交流が生まれる可能性もあります。せっかく社会人に会うのだから、研究のヒントをもらって来るくらいの気持ちで面接に行くのもよいのではないでしょうか。

このように、就活と卒研は相乗効果があると私は考えています。学生の皆さんには、就活が忙しくても、研究のことも忘れずに考えて欲しいと思っています。1週間の中で、研究について考える時間を持つとよいでしょう。こういった活動は、7つの習慣では「第二領域活動(緊急ではないが、重要な活動)」とよばれています。重要度を意識した生活を送るために、私のゼミで開発した第二領域時間管理システム「Self-reflector」を利用することをオススメします。

Self-reclectorの実行画面

大学教員としての意見

最後に、大学教員として、現在の就活の流れについて意見を述べます。今回の採用スケジュールの後ろ倒しは、就活の早期化・長期化による学業への影響に配慮したものです。しかしながら、学生目線からすると、短期決戦となることに否定的な意見を持つ人も少なくありません。例えば、「大企業に落ちた場合に、中小企業を受ける時間的余裕があまりない」、「就活が長期化した場合に、卒論が書けなくなる」といったところでしょうか。

大学教員の立場として、この流れには基本的に賛成です。何故なら、学生が卒研により多くの時間を確保でき、その成果を挙げられるかが重要と考えているためです。卒研は大学生活の集大成であるにも関わらず、就活が開始される時点で、多くの学生はまだ研究室にすら配属されていません(一般的な大学は、研究室やゼミの配属が学部4年の4月であるため)。

卒研に着手していない段階では、自分がどういう課題解決に関心があるのか、どういう能力を駆使してその課題を解決できるのか、といったことが経験できていません。また、研究活動に専念するうち、大学院への進学を志す場合もあるでしょう。そういう状況で就職先が既に決まってしまっている場合、就職先企業とのミスマッチが懸念されます。

このような採用スケジュールのガイドラインは大事ですが、もっと多様な就活を実践する学生が増えるとよいと思っています。1) 在学中にインターンシップや勉強会などで人脈を広げて就職先を見つけたり、2) 研究の成果を企業に売り込んだり、3) あるいは起業したり、4) 地域活動をもとにNPOを立ち上げたり、5) 卒業後に世界を放浪したりと、卒業後の進路の選択肢には様々な可能性が考えられます。まだまだそういった選択をする学生はごく少数でしょうけれど、皆さんが改めて進路を考えるきっかけになればと思っています。

いずれにしても、就活中の皆さんが自分らしい進路選択ができることを期待しています。興味がありましたら、以下の関連記事も合わせてご覧ください。

就職活動における心構えと大学での学び
http://www.yoshihirokawano.com/2014/03/blog-post.html

大学で学ぶ意義:継続して課題を発見し解決する能力を養うこと
http://www.yoshihirokawano.com/2014/11/choose-own-way.html

【卒業生へのメッセージ】社会に貢献すること
http://www.yoshihirokawano.com/2013/03/blog-post.html